適応の力学「反動形成」

子供に憎しみを抱いている継母(ままはは)が、かえって、その感情に対抗して子供をひどくかわいがり、甘やかすことがある。

このように抑圧した傾向(この場合は子供に対する憎しみ)に対して反対の傾向を示すことを「反動形成」と呼ぶが、これも適応の動きである。これは次に述べる代償などと違って、欲求を他に転じてしまうのではなく、これを無効にするような別の傾向を発展させるのである。

アードラーは心の中の劣等感(劣等コンプレックス)を克服しようとして虚勢を張ったり、努力したりする心理を中心として、自説を展開している。この場合は「補償」と称せられることが多いが、やはり一種の反動形成である。他人に劣っているという心のなかのシコリを、我々は抑圧する。そして、これに対抗する傾向をつくるのである。