欲求不満

適応の問題は不適応の状態を土台にして考えられる。空気の効用は空気のない状態に入るときわかるようなものである。精神病者や白痴は適応がうまくゆかないでも、平気でいられるが、一般の人は、どうにかして適応しようとする。

欲求不満(無意識的に不満をもつものをふくめる)というのは、私の考えでは、このような適応をうながすサインである。欲求不満があるために、これに応じた行動がとられ(失敗に終ることもあるが)、再適応がなされる。

入学試験に落第したというように、適応が成功しなかったとき、完全に適応できない状態におちいることもないわけではないが、一般には、これをなんらかの方法で解決しようと努力する。

第一は、合理的解決法である。もっとやさしい学校を選ぼう、もう一年、一生懸命に勉強しよう、そのために予備校に入ろう、といったものである。

第二は、欲求不満を衝動的に除こうとする近道反応(子守がホームシックのためにその子を殺して家に帰るような)や攻撃的行動である。

第三は、不適応状態から自分を守ろうとする「防衛反応」であって、ここ汽とくに問題にしたいのは、この第三の解決方法である。

この防衛反応の種類をあらかじめ表示すれば次のごとくになるであろう。今日、この反応の型は一般の心理学概論でも取り上げられてきているが、本来は精神分析に由来するものであって、「フロイト的機制」とよばれることもある。フロイトが提唱した心理的の仕組みという意味である。

これらの反応は夢などとちがって意識的な行動または反応であるが、無意識的な動きに支配されることが多く、合理的でない。